「AIを使えばアンケート業務を効率化できる」とよく聞きますが、実際にできることと言えば、設問の自動生成か、自由記述から知見を探すテキストマイニングあたりを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。そのため、自分の業務のどこまでをAIに任せられるのか、不透明に感じたままになっている方も少なくありません。
実際には、設問の作成やテキストマイニングだけでなく、配信やデータ整形、集計といった工程にもAIを組み込むことができます。
本コラムでは、アンケート業務を設計・配信・データ整形・集計・分析の5つの工程に分け、それぞれAIにできることとできないことを整理します。ここでは全体像と、自社ならどの工程から着手すべきかの判断基準に絞ってお伝えします。
Contents
AIアンケートとは?
AIアンケートとは、アンケートの設計・配信・データ整形・集計・分析といった各工程にAIを組み込み、担当者の判断と作業を支援する進め方のことです。特定のツール名や機能名ではなく、既存のアンケート業務にAIを部分的に取り入れる考え方を指します。
押さえておきたいのは、「AIがアンケートを代わりに実施してくれる仕組み」ではないという点です。AIが担うのは、設問案の作成や回答の分類・要約といった案を出す作業です。何を明らかにしたいのかという調査目的の設定や、出力された案を採用するかどうかの最終判断は、従来と同じく人が行います。
この線引きは工程によって異なるため、後半の役割分担で改めて整理します。
AIはアンケートのどの工程で使える?【工程マップ】
AIはアンケートの5つの工程すべてで活用できます。ただし効果は工程ごとに異なり、特に効果が大きいのは設問を考える「設計」と、自由記述を扱う「分析」の2工程です。まずは全体像を工程マップで確認してみましょう。
図表:AIアンケートの工程マップ(設計〜分析)
| 工程 | AIでできること | AIでは難しいこと |
|---|---|---|
| 1.設計 | 設問案・選択肢の生成 答えにくい表現の指摘 | 調査目的の定義 設問を採用するかの判断 |
| 2.配信 | 依頼文面の作成 配信対象の絞り込み | 配信先とタイミングの最終決定 |
| 3.データ整形 | 表記ゆれや重複の統一 不自然な回答の抽出 | 回答を除外するかどうかの判断 |
| 4.集計 | 集計の切り口の提案 結果の要約 属性ごとのグラフ化 | 数値の意味づけ 差が生じた理由の解釈 |
| 5.分析 | 自由記述の分類・タグ付け・要約 | 施策への落とし込み 優先順位付け |
「設計」では、聞きたいテーマを渡せば設問案と選択肢をまとめて出せます。具体的な進め方は下記コラムにて解説しています。
あわせて読みたい:[AIを使ったアンケート設計の方法とは?手順とコツを解説]
「配信」では主に依頼文面の作成が対応できます。作業量そのものが小さい工程のため削減効果はあまり期待できませんが、文面を考える負担は軽減できます。
「データ整形」では、表記ゆれの統一や重複の除去などが対応可能です。目視確認の工数を軽減できるうえ、失敗しても影響が小さいため、最初に試す工程としても向いています。
「集計」では、差が出やすい属性の組み合わせや切り口をAIが提案できます。属性ごとにグラフ化してわかりやすくまとめることも可能です。
「分析」は最も効果が大きい工程です。数百件規模の自由記述を分類し、要約するところまでAIが担えます。具体的な手順は下記コラムにて解説しています。
あわせて読みたい:[アンケートの自由記述をAIで分析する方法|手順・プロンプト・注意点を解説]
AIに任せられること・人が判断すべきことの境界線はどこ?
AIと人の境界線は「案を出すか、決めるか」にあります。設問案や分類結果といった選択肢を並べるところまではAIが担えますが、何を明らかにしたいのかを決め、出てきた案を採用するかどうかを決めるのは人の役割です。
図表:AIと人間の役割分担
| 場面 | 担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 設問案・選択肢を出す | AI | 抜け漏れの少ない案を短時間で洗い出せる |
| 自由記述を分類・要約する | AI | 件数が多いほど人の手より早く、一定の基準で分類できる |
| 集計の切り口を提案する | AI | 属性の組み合わせを機械的に列挙できる |
| 調査の目的を決める | 人間 | 何を意思決定するのかは社内状況に依存し、AIには前提を渡しきれない |
| 設問を採用するか決める | 人間 | 回答者の負担と得たい情報のバランスは、現場の状況によって変わる |
| 回答を除外するか決める | 人間 | 除外基準は調査結果の信頼性に直結するため、AIが担えるのは候補の抽出までにとどまる |
| 数値の意味を解釈する | 人間 | 差が生じた理由は、社内の施策や出来事と結びつけて読む必要がある |
AIの出力は、そのまま使える状態ではありません。事実と異なる内容をもっともらしく出力する「ハルシネーション」が起こりうるためです。また、社内の事情や過去の調査結果を把握していないことも理由になります。出てきた案はあくまでも「たたき台」として扱い、正しい内容かどうかを人が確認する手順を必ず挟みましょう。
AIアンケートを始める最初の3ステップ
まず着手すべきなのは、設問の自動生成ではなく既存データの整形です。過去のアンケート結果を整えておくことで、そのデータを使って出力の精度をすぐに試すことができ、新しい調査を待たずに効果を確認できます。
ステップ1:過去のアンケート結果を整える
表記ゆれを統一し、重複した回答を取り除いて、結果を見やすく整えます。すでにあるデータで実施できるため、進行中の調査には影響しません。AIの出力を人が確認する流れに慣れる場としても向いています。
ステップ2:集計と分類を自動化する
整形したデータを使い、自由記述の分類や集計の切り口出しを試します。件数が多いほど手作業との差が出るため、最初に効果を実感しやすい段階です。
ステップ3:設問設計に広げる
ステップ1・2を実施すると、AIの出力をどこまで信頼できるかの感覚がつかめます。その状態で設問案の生成に進むことで、出てきた案を採用するかどうかを判断しやすくなります。
この順番で着手すれば、負担を抑えながらアンケートの作成と分析にAIを取り入れられます。
AIアンケートを始める前に押さえておきたい注意点
AIアンケートで最初に押さえるべき注意点は、ハルシネーションと個人情報の取り扱いの2つです。どちらもAIの性能の問題ではなく、確認手順を決めておけばリスクを抑えられます。
ハルシネーションとは?AIの出力を確認すべき理由
ハルシネーションとは、AIが事実と異なる内容をもっともらしく出力する現象のことです。設問文の説明や自由記述の要約に混ざっても気づきにくいため、公開前や報告前に人が内容を確認する手順を決めておきましょう。
回答データをAIに読み込ませるときの注意
アンケートの回答データには個人情報が含まれる場合があります。利用するAIサービスが入力内容を学習に使う設定になっていないか、データがどこに保管されるかを、読み込ませる前に確認してください。
ツール側のセキュリティを確認する観点については、下記コラムで詳しく解説しています。
あわせて読みたい:[アンケートツール選定のセキュリティチェックリスト8項目!ツール起因の情報漏洩を防ぐ確認ポイント]
AIアンケートのよくある質問(FAQ)
Q. AIアンケートで工数はどれくらい削減できますか?
A. 削減幅は工程と回答件数によって変わるため、一律の数値では表せません。効果が大きいのは設問案を作る「設計」と、自由記述を扱う「分析」の2工程で、特に自由記述は件数が多いほど差が出ます。一方、配信のように作業量が小さい工程では削減効果は限定的です。
Q. AIが作った設問はそのまま使えますか?
A. そのままでは使えません。AIが出せるのは設問の案までで、回答者の負担や調査目的に合っているかの判断は人が行う必要があります。事実と異なる内容が混ざる場合もあるため、公開前に必ず内容を確認してください。
Q. AIに読み込ませた回答データは学習に使われますか?
A. 利用するAIサービスの設定によって異なります。入力内容を学習に使わない設定が用意されているサービスもあるため、回答データを読み込ませる前に、学習利用の有無とデータの保管場所を必ず確認してください。
Q. 専門知識のない担当者でも運用できますか?
A. 運用できます。AIが担うのは設問案の作成や回答の分類・要約といった案を出す作業のため、専門的な集計知識がなくても扱えます。ただし調査の目的を決めることと、出てきた案を採用するかどうかの判断は担当者が行う必要があります。
Q. ChatGPTなどの生成AIと、アンケートツールのAI機能は何が違いますか?
A. 大きな違いは、回答データの受け渡しが必要かどうかです。汎用の生成AIでは、データを書き出して読み込ませ、結果を戻す作業が発生します。アンケートツールに組み込まれたAI機能なら、設問作成から集計までの流れの中でそのまま使えます。できることは近くても、手間と情報管理の面で差が出ます。
まとめ
AIアンケートは、アンケートの各工程にAIを組み込み、担当者の判断と作業を支援する進め方です。5つの工程すべてで活用できますが、AIが担えるのは案を出すところまでで、目的を決めることと最終判断は人の役割です。まずは過去のアンケート結果を整えるところから始めましょう。
smile survey(スマイルサーベイ)では、これらのAI活用をアンケートツール内で完結できる「AIオプション」をご用意しています。テーマから設問案を生成するAIアンケート作成機能、回答データの表記ゆれを整えるデータクレンジング機能、結果の要点をまとめるAI分析レポート機能を備え、本記事で挙げた「設計」「データ整形」「分析」の3工程に対応しています。各機能の詳細は下記ページでご確認ください。提供条件やAIオプションのトライアル可否については、お問い合わせフォームよりご確認いただけます。
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