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NPS®の計測方法とは?顧客満足度との違いと質問テンプレートで
わかりやすく解説
作成日 2023年11月21日
NPS®とは「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で、顧客ロイヤルティーを数値化する指標です。2003年にアメリカの大手コンサル会社「アメリカベイン・アンド・カンパニー社」のフレッド・ライクヘルド氏を中心とするチームにより開発されました。
NPS®調査では回答者が家族や友人に対し「ブランドやサービスをどの程度すすめたいと思うか?」という質問に回答します。0〜10点の11段階で選択した結果から「推奨者」「中立者」「批判者」の3つのグループに分けてスコア化する手法です。
この記事ではNPS®調査のメリットやCS(顧客満足度)調査との違いなどくわしく解説しています。
NPS®とは?
「ブランドやサービスをどの程度すすめたいと思うか?」という質問に0から10までの11段階の評価で回答します。回答に応じて下記のような3つのグループに分けて分析する手法です。
- 9〜10と評価している人:「推奨者」
- 7〜8と評価している人:「中立者」
- 0〜6と評価している人:「批判者」
各グループの特徴は次の通りです。
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「推奨者」(プロモーター):9〜10
サービスや商品を利用したうえで、他の人にもすすめたいと考えている層です。推奨者のうちの約8割が口コミを記載すると言われています。
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「中立者」(パッシブ):7〜8
現状に満足しており中立的な立場にいます。ただし推奨者ほど熱心ではないため他者へすすめることもネガティブな口コミを広げることもありません。何らかのきっかけで他の商品やサービスに流れてしまう可能性があります。
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「批判者」(デトラクター):0〜6
商品やサービスに対して批判的でネガティブな口コミを広げやすい層です。中には商品やサービスに対して失望した体験を持つ顧客もいます。競合に流れてしまう可能性がもっとも高い層と言えます。
以上のような3つのグループに分けた後はスコアの算出です。NPS®の計算方式は非常にシンプルです。回答者全体の「推奨者」から「批判者」を差し引くことで算出できます。
【NPS®計算式】「推奨者の割合(%)」−「批判者の割合(%)」=NPS®
まずはスコアを算出し現状を把握することが大切です。商品やサービスによってそれぞれどの層が多いか少ないか見える化しましょう。目的に応じて施策を講じます。また定期的にNPS®調査を行い顧客のニーズを捉えながら商品やサービスの体験を改善することが重要です。
NPS®調査によって顧客の購買行動の根拠や動機を捉え深堀りするポイントを見極めることができます。改善した内容は顧客にアピールすることで企業イメージのアップに繋げることができ好循環が期待できます。このように常に顧客の声を軸に改善を行なうことがNPS®スコアの向上への鍵となります。
NPS®スコアに比例してロイヤルカスタマーも増えていきます。商品やサービスのファンであるロイヤルカスタマーを増やすためにも、NPS®スコアを把握することは非常に重要です。顧客へのアンケートで推奨度を把握。ロイヤルティーに影響を与える要因の分析。そして改善施策。これらをくりかえし行なっていくことで商品だけでなく企業にも愛着を持ってもらえる効果も大いに期待できます。
NPS®が採用されている背景
現在ではNPS®を取り入れている企業が珍しいものではなくなりました。従来のCS(顧客満足度)調査に加えてNPS®も主流になりつつあります。NPS®は「周りにどれくらい商品やサービスをすすめたいか」という未来の行動を点数化した指標です。顧客ロイヤルティーを計測する指標でもあるため、将来の収益性と連動するとされており成長率と高い相関関係があります。
顧客満足度調査のデータだけでは将来の予測が立てにくいためNPS®のデータを活用して多角的な目線で経営戦略に活かす企業が増えています。また商品、サービスさらには企業全体にまで調査の対象を幅広く設定できる特徴があります。BtoB、BtoC、業種を問わず実施されています。
NTTコムオンラインでは業界別のNPSランキングを公開しています。業界別の平均から大手企業のスコアの推移まで掲載されているので参考にしてみてはいかがでしょうか。
またNPS®はアンケート構成がとてもシンプルです。実施へのハードルが低い点も採用される背景のひとつと言えます。
CS(顧客満足度)調査との違い
CS(顧客満足度)調査は現時点での顧客の満足度合を表したものです。未来の行動をスコア化するNPS®に対して、CS調査はその時点での一時的な満足度を尋ねるもので、一時的な感情が反映されやすいことが特徴のひとつです。またCS(顧客満足度)調査は取りたいデータを見据えてアンケート構成する必要があるため実施へのハードルが高くなりがちです。
商品やサービスの満足度について聞いた場合、よほど不満と感じない限り「満足」に回答が集まりやすい傾向にあります。そのため購買行動の予測など詳細なデータを取得したい場合は別途質問を設ける必要があるでしょう。
またCS(顧客満足度)調査はデータ分析には注意が必要です。顧客満足度が高い顧客はリピーターとみなしてしまいがちです。実際の回答例を見てみましょう。
- 「とても良いサービスだったが、料金が高く人にすすめることはできない」
- 「リーズナブルでよい商品だったが、お店の場所が遠く購入しにくいためリピートは考えていない」
- 「サービスも料金もよかったが、スタッフの態度が悪かった」
コメント例のように全体的には概ね満足しているものの、一部を欠点と感じるケースがあります。上記に挙げたような内容では顧客がまた商品を購入してくれる可能性は低いのです。満足度が高い場合でも、次回以降の購入行動を必ずしも約束するものではないと言えます。
一方のNPS®調査は現在も含めて長期的な満足度を表し、将来の行動予測をすることが可能です。また他者への推奨度がわかることもポイントです。NPS®調査のスコアを知ることでロイヤルカスタマーを創出し、さらには新規顧客獲得へと施策を拡大することが可能です。
顧客満足度調査にそのまま使えるアンケートテンプレート注意点や作成のコツとは?
NPS®のデメリット
このようにNPS®調査は利点ばかりと思いがちですがデメリットも把握しておきたいところです。NSPのスコアはアメリカで考案された指標とあって、欧米人と比較すると日本人を対象とした場合マイナスのスコアが多くなる傾向があります。思ったことをはっきりと表現する欧米の文化と、同調を重んじ周囲と合わせる日本の文化との違いがスコアにあらわれていると考えられます。
具体的には10点満点なら5点、5点満点なら3点と中間値を取るのが日本人の特徴です。NPS®の区分に当てはめると中間の5点は「批判者」となります。そのため全体的に低いスコアとなる傾向があります。
ただし顧客のセグメントや商品やサービスによってもスコアの傾向が違ってくるためまずは現在のスコアの位置を把握した上で推移を見ていくことが大切です。
調査のための準備
事前の目的や定義をはじめ、回収したデータをどのように利活用するのかきちんと検討しておきましょう。アンケート構成はシンプルなため実施までの障壁は低いですが、データ分析の比重が大きいことも考慮しておくとよいでしょう。
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1. 目的・課題の確認
調査内容を具体化することで目的を定めます。商品やサービスのほかブランド全体を対象とするケースもあります。NPS®調査の対象を設定すると課題の見極めから施策の立案もスムーズに進めることができます。
NPS®には「リレーショナル調査」と「トランザクショナル調査」の2種類の調査があります。設問内容や調査頻度によって異なるため、どちらの調査を行うか目的に合わせて決めておく必要があります。
■ リレーショナル調査
主に商品やサービス全体に対するロイヤルティを調査することができます。サービス全体において何を改善すべきか大まかに把握することもできます。
質問数はやや多くなる傾向にあるため、回答者の負担が大きいのが特徴です。実施する頻度は四半期に1回程度、年1〜2回の実施が望ましいでしょう。決算や顧客が大幅に増減するタイミングでの実施も推奨されています。
■ トランザクショナル調査
顧客との接点の場(タッチポイント)における満足度を調べることができます。商品の購入など顧客の行動に合わせて接点を持つ調査です。
質問数が少ない構成にできるので、実施の頻度が高い場合でも回答者に負担を掛けることなく実施することができます。目的に合わせて定期的な調査スケジュールを検討しましょう。
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2. アンケートの作成
つづいてアンケートを作成するために、目的に合わせた質問内容を洗い出します。まずは質問数を制限せず、アンケートに盛り込むべき内容をピックアップします。
顧客がサービスや商品を購入し利用するまでの道のりを可視化できる「カスタマージャーニーマップ」を使うと便利です。ロイヤルティーに影響を及ぼすのは顧客行動のどの部分となるのかを確認したうえでアンケートを設計することができます。以下は質問例です。
Q1: 「このサービスを周りの人にすすめたいと思いますか?」
→ こちらの質問でまずは0〜11点の11段階評価を回答してもらいます。Q2: 「Q1で回答した点数の理由を教えてください。」
→ スコアを付けた理由を合わせて質問します。スコアの数値だけでなく、スコアを付けた理由を分析することが重要です。顧客が下したスコアの背景に顧客ロイヤルティーを向上させるためのヒントが隠されているのです。 -
3. 対象者の選定
NPS®調査の対象者を選定します。
- 商品やサービスを利用した人全員
- 直近1年以内の利用者を対象
- キャンペーン利用者のみ
このようにどの顧客に対して>NPS®調査するかを明確にします。年齢や居住地、職業など細かくセグメントして、より詳細にターゲットを設定する方法もあります。取得したいデータや目的に合わせて対象者を選定しましょう。
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4. 回答回収データの分析
データ分析は課題を把握するための大切な作業です。スコア集計はもちろんのこと、スコアを付けた理由も重要ですのでしっかり時間をかけて確認します。
例えばスコア分布では総じてスコアを高くつけた人に着目。その共通点を探ります。対象者のセグメントごとに見られる傾向などをスコアと掛け合わせて分析するのも良いでしょう。
コメント分析はポジティブなコメントとネガティブなコメントに分けたり、トピックごとに分けたりすることでポイントが絞りやすくなります。コメントを詳細に見ていくと同じスコアをつけた場合でも「推奨者」「批判者」と分かれることがあるのでしっかり確認していきたいところです。ここでも同様にデータを掛け合わせる手法が有効です。購入履歴や性別など属性を組み合わせた分析も検討しましょう。
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5. 施策の検討
データ分析から得た課題や改善点をもとに施策を検討するフェーズです。
- スコアが低いため全体的なボトムアップを図る
- ボリュームゾーンである中立者を推奨者へと遷移させたい
- 数は少ないが推奨者を重視して新規獲得へと繋げたい
事前に決めた目的と照らし合わせ一貫した精度の高い施策へとつなげていきます。例えば1年後に再度NPS®調査を実施した際にどのような結果を得たいかを逆算して考える手法もあります。商品やサービスの現在の状況を鑑みて効果的な施策を検討したいものです。
NPS®調査専用ツールとは?
定期的に実施し何度もPDCAを回して推移を追っていくことで効果を発揮するのがNPS®調査の特徴。データを正しく分析した上で施策を検討する必要があるため、作業ボリュームも非常に大きくなります。そのため作業負を軽減してスムーズに運用できるよう考案されたNPS®調査専用のツールも多く提供されています。
長期的な視点でロイヤルカスタマー創出するためには、業務の効率化は必須の条件と言えます。そこでNPS®調査専用のツールが活躍します。アンケート作成や配信、分析、共有まで一括管理が可能。調査に関わる作業負担を最大限に軽減することができます。
NPS®設問作成ができるテンプレート、NPS®分析専用のダッシュボードなどNPS®調査に関わる一連の機能が備わっています。
- NPS®コメント分析
- NPS®推移
- 推奨度分布
- フィルタ機能
- 総合満足度
- 総合コメント分析
- スコア推移
- 個別要素満足度
- コメント分析
- 推奨度に対する個別満足度のポートフォリオ
- 改善度指数ランキング
単純にアンケートを実施する場合は一般的なアンケートツールで問題なく実施できます。11段階の選択式のNPS®設問を作成することも通常のアンケートツールで十分でしょう。ただしデータ集計から結果分析などNPS®機能に特化したツールを利用すると作業を効率的に進めることが可能です。中長期的な視点でNPS®調査する場合はこのようなツールの導入も検討してみましょう。
まとめ
顧客ロイヤルティーを測るNPS®調査は、シンプルな設問ながらサービス改善や製品開発、マーケティングなどの施策を検討した際の判断材料として役立つ指標となります。また顧客から得たデータに基づいて自社サービスの強み・弱みを知り、より良いサービス提供のための施策に繋げることができます。
長期的な視点でNPS®調査を実施しスコア改善を図っていくことでロイヤルカスタマーの創出や売り上げ向上を見込むことができます。企業の成長戦略に有効活重要な指標と言えます。未来の顧客の行動を予測するNPS®スコアは企業の将来的な収益拡大のための大切なデータの一つとなります。正しくスコアを測定して改善項目を把握して的確な施策を検討する。正しくPDCAを回してNPS®スコアを有効活用しましょう。
NPS®調査や分析ができるアンケートツールには、サーベイに強みがあるものやNPS®調査に特化したものなどがあります。それぞれのツールを比較し自社にあったツールを選ぶようにしましょう。
「smilesurvey CX」ではNPS®調査に最適化したシンプルな機能をご利用いただけます。アンケートの設計や推奨度の把握、ロイヤルティに影響を与える要因の分析など、効果的な改善施策の展開に至る一連の活動がスムーズに行えます。
NPS®調査に特化した【 smile survey CX 】の機能について詳しくみる
この記事のライター
スマサーコラム編集部
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