アンケートを実施して集計が終わったとき、出てきた回答率を見て「この数字は良いのか、悪いのか」と迷った経験はないでしょうか。ネット上で検索して出てくる「平均○%」という数値を見ても、自社とは配信方法も対象者も違うため、判断材料になりません。社内で報告しようとしても、目標値の根拠が示せず説明に困ります。
このコラムでは、アンケートの回答率・回収率の計算方法を分母の決め方から整理し、他社の平均値に頼らずに目標を設定する手順を解説します。読み終えたときには、自社の数字の評価基準と、次回の配信計画に落とし込む考え方が手元に残る状態を目指します。
Contents
アンケートの回答率の平均は何%?
実は、アンケートの回答率に、業種や手法を越えて通用する「平均値」は存在しません。回答率は分母の定義・対象者との関係性・依頼経路によって同じ調査でも数倍変わるため、他社の平均値と自社の数字を並べても、良し悪しの判断はできないのが実情です。
そのため平均値を探すのではなく「自社の数字を正しく計算し、自社の目的から目標を決める」という順序をおすすめします。まずは用語の整理から始めましょう。
回答率と回収率は何が違う?
回答率とは、アンケートの配信対象者のうち、実際に回答した人の割合のことです。一方、回収率とは、配布したアンケートのうち回収できた件数の割合のことです。回答率は「人」を主語に、回収率は「票」を主語にした言い方だと整理すると分かりやすくなります。
ただし実務では、Webアンケートの文脈で両者はほぼ同時意味合いで使われています。紙の調査票を配布・回収していた時代の言葉が回収率、オンライン化以降に広まった言葉が回答率と考えて問題ありません。社内の報告書で混在させると混乱を招くため、どちらを使うかを先に決めておくことをおすすめします。
回収率は施策によってさまざまな対策方法があります。セミナー後のアンケートの回収率をあげる方法は下記コラムにて解説しています。
あわせて読みたい:[セミナーアンケートのテンプレートと質問例|回収率を上げるコツ]
なぜ他社の平均値と比べても意味がないのか
回答率は、次の4つの条件が違うだけで大きく動きます。裏を返せば、この4条件が揃っていない他社の数値とは比較できないということです。
・分母の定義
配信数を分母にするか、到達数を分母にするかで数字が変わります(次章で詳述します)。
・対象者との関係性
既存顧客・従業員・購入直後の来店客・接点の薄い見込み客では、そもそも協力してもらえる確率が違います。
・依頼経路
メール、Webサイト上の表示、店頭での声かけ、上司からの依頼では、開封や着手のハードルが異なります。
・設問数と所要時間
3問と30問では離脱率が変わるため、同じ依頼でも結果が変わります。
公的な統計調査の回収率は調査方法とセットで公表されていますが、これも自社で行う顧客アンケートとは前提が異なります。参考値として眺める程度に留め、目標設定の根拠には使わないほうが安全です。
回答率はどう計算する?分母の決め方で数字は変わる
アンケートの回答率は「回答数 ÷ 分母 × 100」で計算します。分母には配信数・到達数・開封数の3通りがあり、どれを選ぶかで同じ調査の回答率が2倍以上変わります。社内で分母の定義を1つに固定することが、計算の第一歩です。
回答率(%)= 有効回答数 ÷ 分母 × 100 ※有効回答数は、テスト回答・重複回答・白紙回答を除いた件数を指します。
分母の3パターン:配信数/到達数/開封数
例えばメールで1,000件配信し、宛先不明などの不達が50件、開封が400件、有効回答が120件だった場合で計算してみます。(数値は説明のための架空の例です)
| 分母の取り方 | 計算式 | 回答率 | 数字の意味 |
|---|---|---|---|
| 配信数:1,000件 | 120÷1,000 | 12,0% | 施策全体の成果。目標管理や前回比較に向く |
| 到達数:950件 | 120÷950 | 12,6% | リストの品質を除いた実力値。名簿の鮮度を切り分けたいとき |
| 開封数:400件 | 120÷400 | 30,0% | 依頼文とアンケート本体の説得力。改善点の特定に向く |
同じ調査で12,0%と30,0%が並び立ちます。どちらも間違いではありませんが、目標管理として使うなら配信数基準、改善点を探すのであれば開封数基準と、目的で数値を使い分けるのが実務的です。
「見かけの回答率」が高く出てしまう典型パターン
報告用として計算した数字が実態より高く出てしまうのは、次のケースが考えられます。悪気なく起こるため、集計ルールとして先に把握しておくと安心です。
・開封者を分母にしたまま「回答率」と呼ぶ
前回が配信数基準だと、比較した瞬間に数字が跳ね上がります。
・不達・退職者・解約済み顧客を分母から外す
実力値としては妥当ですが、前回と条件を揃えなければ推移が読めません。
・テスト配信や社内関係者の回答を含める
件数が少ない調査ほど影響が大きくなります。
・途中離脱を有効回答に数える
どこまで回答されていれば有効とみなすかを、集計前に決めておく必要があります。
社内で分母の定義を1つに固定する
回答率が比較可能な指標になるのは、定義が固定されているときだけです。「分母は配信数、有効回答は最終画面まで到達した回答、テスト配信は除外」といった一文を調査計画書に記載し、次回以降も同じルールで測ります。この一手間を加えることで、次章の目標設定を成立させる前提になります。
目標回答率の決め方(サンプル数と前回実績から)
目標回答率は「何%取りたいか」から決めるのではなく、「判断に必要な回答件数は何件か」から逆算して決めます。必要件数は母集団の大きさと許容できる誤差から算出でき、それを配信数で割った値が、その調査で達成しなければならない回答率です。
目標回答率(%)= 必要回答件数 ÷ 配信可能数 × 100
信頼水準95%・回答の散らばりを最大に見積もった場合の必要件数は、母集団と許容誤差によって次のようになります。
| 母集団 | 許容誤差±5% | 必要な回答率 | 許容誤差±10% | 必要な回答率 |
|---|---|---|---|---|
| 500人 | 約218件 | 43,5% | 約81件 | 16,1% |
| 1,000人 | 約278件 | 27,8% | 約88件 | 8,8% |
| 10,000人 | 約370件 | 3,7% | 約95件 | 1,0% |
この表が示しているのは、母集団が小さいほど高い回答率が必要になるという事実です。従業員500人の社内アンケートでは40%超が要求される一方、10万件のメール配信なら数%でも判断に足ります。「平均○%」という一律の目標が機能しない理由が、ここにも表れています。
許容誤差と信頼水準の考え方
「満足層60%」という結果が出たとしても、実はこの数字をそのまま信じてはいけません。調査には必ず「ぶれ」があるからです。このぶれ幅を表すのが許容誤差で、たとえば許容誤差±5%なら、実際の値は55~65%の範囲に収まっていると考えます。もう一つの信頼水準は、その範囲予想がどれだけ確からしいかを示す数値で、実務では95%を使うのが一般的です。
大まかな傾向をつかむ社内向け調査なら±10%、経営会議や外部公表の資料に使うなら±5%と、用途で使い分けます。全員の回答を集める必要はない、と割り切れることが目標設定を現実的にします。
部署別・店舗別に見たいならセグメント単位で必要数を確保する
見落としやすいのが内訳の必要数です。全体で400件集まっても、10部署に分かれていれば1部署あたり40件、回答が偏れば数件しかない部署も出ます。この状態で部署別比較を行うと、実態とは無関係な差が生まれます。
内訳で判断したい軸があるなら、その単位で必要件数を確保する設計にします。あわせて、回答数が一定件数未満のセグメントは集計を非表示にするルールも決めておきます。特に社内アンケートでは、少人数の集計結果が個人の特定につながる懸念があるためです。
もう1つの基準は「自社の前回実績」
他社平均の代わりになる実務的な基準は、自社の前回実績です。同じ分母定義・同じ配信経路・同程度の設問数で比較すれば、回答率の増減はそのまま施策の成果として読めます。初回の調査は、今回の数値をベースラインとして記録することが目的になります。
前回と比較するために揃えておきたい条件は次の4点です。
・分母の定義
配信数基準なら次回も配信数基準で測ります。
・配信の曜日・時間帯
BtoBのメール配信では、着手率が大きく変わる要因になります。
・設問数と所要時間
設問を増やした回の回答率低下は、施策の失敗ではなく設計変更の結果です。
・リマインドの有無と回数
条件が違えば単純比較はできません。実施の有無を記録に残します。
初回調査で「目標が立てられない」と悩む必要はありません。条件を記録しながら1回実施すれば、次回からは根拠のある目標が持てます。
4ステップでもう一度流れを確認する
目標設定は「調査の目的を確認する → 必要回答件数を算出する → 分母の定義を固定する → 前回実績と照らす」の4ステップで進めます。他社の平均値を調べる工程は含まれません。
1.調査の目的と、結果をどう使うかを確認する
経営会議の資料に使うのか、社内の傾向把握か。求める精度が決まります。
2.必要回答件数を算出する
母集団と許容誤差から必要件数を出し、内訳で見たい軸があればセグメント単位でも確保します。
3.分母を定義し、目標回答率に変換する
必要件数 ÷ 配信可能数で目標値を出し、調査計画書に定義を明記します。
4.前回実績と照らして現実性を確認する
前回を大きく上回る目標なら、施策側の変更が必要だと事前に分かります。
目標に届かないとき、どこから手を付けるか
目標に届かない場合の打ち手は、大きく「依頼文の改善」「設問設計の見直し」「未回答者へのリマインド」の3方向です。どこに原因があるかは、開封数を分母にした回答率と配信数を分母にした回答率を見比べることで切り分けられます。
・開封はされているが回答されない
設問数・所要時間・回答形式に原因があります。回答形式の選び方は関連記事で解説しています。
・開封自体が少ない
件名と依頼文、配信タイミングの問題です。依頼文の書き方は専用の記事にまとめています
・一定数は集まったが目標に足りない
未回答者だけを対象にしたリマインドが最も確実です。
回答率が低い結果を、そのまま意思決定に使うリスク
回答率が低い調査結果は、実態より良い数字が出やすくなります。関心が高い層や満足している層が優先的に回答し、回答しなかった人ほど本音を抱えていることがあるためです。この、回答した人と回答しなかった人の傾向の違いによって集計結果が実態からずれる現象を非回答バイアスと呼びます。顧客満足度調査で不満を持つ顧客が回答せず離脱していれば満足度は高く出ますし、従業員アンケートでも組織への関心が高い層の声が過大に反映されます。回答率は、集計結果の信頼性を判断するための前提情報でもあります。
回答率が目標に届かなかった場合は、結論を出す前に「誰が答えていないか」を確認します。属性ごとの回答率を並べ、特定の部署や顧客層が抜けていないかを見るだけでも、解釈の精度は上がります。報告資料には、回答率と分母の定義を必ず併記してください。
アンケートの回収率に関するよくある質問(FAQ)
Q. アンケートの回答率は何%あれば合格ですか?
A. 一律の合格ラインはありません。合格ラインは調査の目的と必要な回答件数で決まります。母集団500人で許容誤差±5%の精度が必要なら約218件、つまり43,5%程度の回答率が必要です。一方、母集団1万人であれば約370件、3.7%でも判断に使えます。母集団が小さいほど高い回答率が求められます。
Q. 回収率と回答率は使い分けるべきですか?
A. Webアンケートではほぼ同義として扱われており、厳密な使い分けは不要です。回答率は配信対象者のうち回答した人の割合、回収率は配布した調査票のうち回収できた割合を指します。ただし社内の報告書で両方が混在すると混乱するため、どちらの語を使うかを先に決め、分母の定義とあわせて明記することをおすすめします。
Q. サンプル数は何件から信頼できますか?
A. 必要件数は母集団の大きさと許容できる誤差で決まります。信頼水準95%・許容誤差±5%の場合、母集団1,000人なら約278件、1万人なら約370件が目安です。母集団が大きくなっても必要件数は400件前後で頭打ちになります。部署別や店舗別に比較したい場合は、その単位ごとに件数を確保する必要があります。
Q. 前回より回答率が下がった原因は、どう切り分けますか?
A. まず分母の定義と集計ルールが前回と同じかを確認します。次に、配信数基準の回答率と開封数基準の回答率を前回と並べます。開封数基準が下がっていればアンケート本体(設問数・所要時間)、開封率自体が下がっていれば件名や配信タイミングが要因です。設問数の変更やリマインドの有無も記録と照合してください。
Q. 他社の平均回答率と比べたいときは、どうすればよいですか?
A. 比較するなら、分母の定義・対象者との関係性・依頼経路・設問数の4条件が明示されている数値だけを選んでください。条件が書かれていない「平均○%」は、自社の評価基準には使えません。実務では、同じ条件で測った自社の前回実績と比較するほうが、施策の成果を正確に読み取れます。
あわせて読みたい:[【回答率を上げる】アンケート依頼文・メールの書き方とテンプレート]
まとめ
アンケートの回答率に業種を越えた平均値は存在しません。分母の定義・対象者との関係性・依頼経路・設問数で数字は大きく変わります。
回答率は「有効回答数 ÷ 分母 × 100」。分母を配信数・到達数・開封数のどれにするかを社内で1つに固定してください。
目標回答率は、必要サンプル数から逆算して決めます。比較の基準になるのは他社平均ではなく、条件を揃えた自社の前回実績です。
「smile survey(スマイルサーベイ)」なら、回答率をリアルタイムで確認しながら、未回答者へのリマインドなど次の一手をすぐに打てます。回収率管理でお困りの際は、お気軽にご相談ください。


